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修復報告書

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ランビエンテ修復芸術学院 Istituto per il restauro "L'ambiente" 
徳川家収蔵作品 須田輝州 初夏之夕立 修復報告書 

 
 

写真2.処置前通 常光撮影


資料1. 額の保存状態(表面 )
額寸法 :860x1180(mm)
特徴  :石膏のレリーフによる装飾、金箔押し、ガラス無し

保存状態:画面に対し右部のほぼ全てと左上部の一部の装飾が欠損している。
保存状態:実際の欠損箇所は上図、赤色に示した部分。
作品

作品は額に入った状態で到着し、額裏面右辺上部に縦書きで 額第一〇號 油絵 初夏之夕立 須田輝洲筆 と書かれたラベルがあった。

木枠

裏面の木枠は中桟があり、十分な強度を保っていたが、木枠から全体的に釘が浮いて来ており、サビが出ていた。

支持体


支持体は市販のキャンバスで張りの状態は比較的よく、弛みは少なかったが、裏面 は埃による汚損が 激しく、カビ跡と思われる薄茶色のシミが全体に拡がっていた。 また、垂れ染みが裏面左半面に顕著で、この部分を下に向けて保管されていた際に水分が滴下した可能性が高い。
画面右辺中央に木枠と画布の間の異物による凸状変形が確認された。

地塗り層

地塗とその上の絵の具層は薄いが、支持体と各層間の固着は良好であった。


絵具層


絵具層は油性で薄く、画面白色部分には無数の白点、同灰色部分には、やはり無数の黒い斑点 を確認することができ、白色のカビの跡である可能性が高い。 白い雲の部分と樹木の葉の部分にやや厚塗りの表現、雲の白色には乾燥性亀裂が確認できる。 画面右半面数カ所にチョーク跡と思われる白い線描が確認できる。 画面下辺中央やや右に油彩と思われる黒色絵具の筆跡が見られる。

ニス層

ニス層は非常に薄く、画面は埃に覆われ、全体的にマットで作品の鑑賞性は非常に損なわれていた。 額にかかっていた周辺部にはニスが比較的良い状態で残っていた。



額は木の構造部分の支持能力はあるものの、表面右半分の装飾部分は殆ど剥落し、作品の鑑賞性を妨 げており、その裏面には水によるものと思われる染みが顕著であった。
 

写真3. 裏面額縁上のラベル
作品サイズ、技法、作品名、作者名を記述したラベルが裏面 に添付されていた。

額芽10号 油繪 初夏之夕立 
須田輝州筆
資料2. 額の保存状態(裏面 )  
   
資料2. 額の保存状態 (左図上)
 部分:黒い液体の垂れじみ


作品裏面キャンバス上に黒い液体が流れた後が観察された。液体の流れる方向から、作品画面 に対して 左辺を上にして保管されていたと考えられる。(写 真4)

裏面全体に黴の後が見られる。
(紫外線で黒色に変化)
写 真4. 裏面部分 黒い液体の垂れ染みが流れている。  
   
 
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