lambientetop.jpg(17571 byte)

修復報告書

home>> アーカイブ>> 修復報告書


ランビエンテ修復芸術学院 Istituto per il restauro "L'ambiente" 
徳川家収蔵作品 公爵徳川家達様御肖像 修復報告書 



 
写真21. 処置後/全図通 常光撮影(額装)

写真22. 処置後/全図裏面 通常光撮影(額装)
15.絵具層接着強化

   絵具層の亀裂部で浮き上がっている箇所を中心に、画面側からプレキシゾルをミネラルスピリットで1:3に希釈したものを入れて一部過剰な接着剤を拭き取り、溶剤を揮発させてからコテアイロンを使って加熱圧着をした。また画面 左側と下側の絵具層が薄く乾燥して剥落の危険がある箇所にも同様の処置を行った。


16.ニスむらの除去

 ニスのむらが全体的な作品の鑑賞の妨げとなっていたので、過剰な部分のニスを薄くして弱め、周りと均一性を持たせるようにした。ミネラルスピリッツとイソプロピルアルコール(1:1)の混合溶剤でニスを少しずつ除去した。ニスを弱めた箇所は人物右腕の袖下と右胸、左上腕部のニス垂れが目立つ部分と右手の過剰に艶の目立つ部分である。背景の艶むらはニスによるものではなく、作者の修整によるペンティメントによるものであると判断したため処置はされなかった。


17.充填整形


 絵具層および地塗り層の剥落部にボローニャ石膏と兎ニカワで作った可逆性のある石膏を使って充填整形をし、後に続く補彩 の下地を作った。

18.水彩絵具による補彩


 充填整形をした箇所に同じく可逆性のある不透明水彩絵具を使って補彩 した。絵具の薄落部分は主に背景部でそれぞれは小さかったため、補彩 はミメーティコ(オリジナル部分と同じ色で同じ筆致で行う)技法で行った。この技法で補彩 を行った場合、可視光線ではオリジナルと識別できないが、紫外線ライトの使用により識別 が可能となる。


19.ニスの塗布

   まずニスが引けて極端に艶のない画面左側と下側に部分的に天然樹脂のマスチックをテレピンで1:8に溶かしたものをミネラルスピリットで1:1の割合で希釈したニスを筆で塗布して全体の艶をなるべく合わせるようにした。その後同じニスをスプレーで画面 全体に2回塗布して、全体の調和を合わせた。スプレーを使うことによりニスを薄く均一に塗布することができ、刷毛塗りよりも艶を抑えたマットな質感になる。


20.樹脂絵具による補彩

   水彩絵具で補彩を行った箇所にニスやオリジナルの油絵具と艶や色を最終的に合わせるために可逆性のある樹脂絵具で補彩 を行った。

21.処置後の写真記録

通常光、斜光、裏面、部分の撮影が行われた。

 
 

Copyright (c) 2005 Tokugawa Memorial Foundation. All Rights Reserved.
Never reproduce or republicate without written permission.

当ホームページ 徳川家所蔵作品修復報告書は 財団法人 徳川記念財団 より許可を得て掲載しております。
すべての内容は徳川記念財団が有する著作権により保護を受けています。
掲載されているあらゆる内容の無許可転載・転用を禁止します。
Copyright(C) 2008 Istituto per il restauro e l'arte - l'ambiente. All rights reserved.