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修復報告書

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ランビエンテ修復芸術学院 Istituto per il restauro "L'ambiente" 
徳川家収蔵作品 公爵徳川家達様御肖像 修復報告書 

 
資料2.可視光線による裏面 観察結果
裏面の絵具の染み出しと画面ロケーションの符号
 
特に目立つ染み出し
 
裏側へ染み出した絵具・乾性油

資料3.可視光線による観察結果
 
可視光で確認できるニス斑
 
特に目立ったニス斑(処置した箇所)
 
乾燥性亀裂
 
剥落



 装飾の石膏および金箔が一部剥落しているものの、木の構造部および装飾部は目立った変形や虫喰い跡は無く状態は良好だった。埃以外の付着物や汚れは無かった。部分的に意図的にかけられたと思われる黒っぽい埃が特に装飾部のレリーフ溝に溜まっていたが、これは古色を出すためやレリーフの凹凸 感を出すため制作時に加工されたものと思われる。また赤茶色のニスのようなものが塗られている箇所が一部有り、これも同様に古色や凹凸 感を出すためのものと思われる。一部擦れによると思われる金箔が剥がれている箇所が有り、その下には金箔下地の赤茶色のボーロ層が見えた。  

木枠

わずかに反りによる変形があるものの、構造や強度に問題は無い。但し楔は劣化し強度が無くなっていた。また右下角の楔が一つ紛失していた。  

支持体

画布の張りは全体的に緩く不均一で、特に画面左側が緩んでいた。キャンバス自体の強度に問題は無く、裂けや穴は無かった。耳も四辺共十分に残っていた。裏面 には保護紙が貼られていたためキャンバスの埃による汚れはほとんど無かった。キャンバス裏面 は画面の黒い絵具部分を中心に部分的に絵具のメディウム分また顔料の一部が染み出していた〈資料 2〉。裏面には保護用の柿渋加工された厚紙がくぎ止めされていて、その保護紙を取り外すとキャンバス右下に白い画仙紙に筆で墨書きで下記の縦書きされたラベルが四隅をのり付けされ貼られていた。制作年月日と思われる。
白い画仙紙に縦書きされたラベル、制作年月日と思われる (写真 21・22 参照)

地塗り層

 薄くかさかさしているが画面側の固着力は良好で剥落や亀裂は見られない。側辺では一部細かく剥離している部分がある。また画面 左側の地塗りが極端に薄くキャンバスが目視できる箇所も有り、この部分では固着力が多少弱く亀裂している箇所もある。


絵画層

 油性で全体的に薄く固着力は良いが全体的に亀裂が入っている。画面 左側の地塗り層の薄い箇所では絵具層も非常に薄くて艶も無くかさかさしていて細かい亀裂が目立つが、絵具層および地塗り層が極端に薄いため剥落の危険性は無い。但し絵具層の艶が無く白っぽくなっているため特に署名付近の椅子部分などは図像が判別 しずらくなっていた。また、画面右側および背景部分を中心に絵具の乾燥性亀裂が目立つ(資料 3)。画面周縁部や本の一部に地塗り層ごと剥落している箇所が有る
(資料 3)。作品周縁1cm程の所を囲むように絵具層が押しつぶされた様な跡があり、これは額によってついた跡と思われる。

ニス


 画面全体にニスが薄くかけられていたが画面左側と下側は艶が無くひどく乾燥して白っぽく見え、ニスの効果 は無くなっていた。一方、顔や両手、背広の左襟の横、右襟、背景右側の一部には過剰とも思われる薄褐色のニスが刷毛状のもので塗られて一部垂れ跡も有り、一部分だけが過剰に光を反射して作品の鑑賞を妨げている部分もあった
(資料 3)
 
 

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