美観修復 Astrazione Cromatica

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学生参考作品:絵画修復科 2002年度生 

<アストラツィオーネ・クロマーティカ(色彩 抽象化)>フォルムと色彩 の再構築が困難な大きな欠損部に対する補彩技術。オリジナルと欠損部の色彩 的連絡を目的とし、フォルムの再構築は行なわない。補彩の筆致は直線ではなく、緩くカーヴをかけた各色のハッチングを交差、集積させ、その絵画の中で用いられている色彩 のヴァルールを平均化したニュートラルカラーを導きだし、補彩 部分に適用する。通 常用いる色彩は:黄色、赤、青(緑)、黒の4色である。



 
ASTRAZIONE の補彩 処置とセオリー

●充填整形

石膏と兎膠の充填材(他のマテリアル適用するケースもある)を用いて欠損部に対する充填整形を行なう。オリジナルの絵具層とレベルを合わせ表面 を平滑にする。表面のイミテーションを完全には行なわない。

●補彩 のプロセス

補彩に用いる絵具は、水彩絵の具、樹脂絵具、もしくはその両方から選択できる。補彩 を適用する作品の性質と処置の実践によって選択肢は異なる。
水彩絵の具を用いる場合、まず黄色を用い、ハッチングによる最初の層の着彩 を行なう。タッチは平行筆致で緩く交差させる。次に赤色で同様の補彩 を行ない、続いて青色(もしくは緑色)、最後に黒色の順で 処置を行なう。通常はこの順で行なうが異なるケースもある。
補彩の全てを樹脂絵具を用いる場合、充填材の上に希釈したシェラックニスを薄く塗布し絶縁処置を施す。これにより充填材上の部分的な浸透性の差違による不具合を予防できる。弱いベースカラーを施し、処置を行なう。三原色のプライマルカラー+黒の適用はどのようなトーンをも容易に構築しうる。青色の代わりに(もしくは一緒に)緑色を用いるのは、トーンに暖色系のニュアンスが求められるケースである。

●ワニス処置

補彩 が終了した段階で終了ワニスを塗布する。ワニス塗布による屈折率の変化に伴い補彩 の色彩は変化する為、補彩の段階での予測が必要である。 特に不透明水彩絵具を用いた補彩の場合、視覚的変化が著しい為、ワニス塗布後に周辺オリジナル部分と色が合うようにコントロールする(実際よりも明るめに補彩 を入れる)ことが必要になる。

水彩絵の具を用いた補彩処置を行なった場合、必要がある場合は樹脂絵具による最終的な色調整を施す。

補彩 部分拡大図

黄色、赤色、青色(緑色)+黒色を適用(水彩絵具使用)
各色の筆致の集積により、近接した色彩が視覚的な振幅作用を生み出し、補彩 に求められるニュートラルカラーのトーンを構成させる。トーンの調整は各色の密度の増減や筆致の交差方法の違いによって行なう。

 

●アストラツィオーネは、どのような絵画の 鑑賞距離に於いても、補彩部分が識別可能でなければならない。
 
●各色彩による交差されたハッチングのコンビネーションにより、補彩 周辺のオリジナル部分と色彩的に良く調和のとれたトーンを獲得しなければならない。欠損部は絵画の鑑賞を妨げることの無いよう、オリジナル部分よりも後退して見える視覚的効果 を得る必要がある。 不適切な補彩は、浮き上がったように見えたり、汚班のように視覚的に干渉し、作品の鑑賞を妨げる危険性がある。

 

  

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