美観修復 Selezione Cromatica

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学生参考作品:絵画修復科 2003年度生 
<セレツィオーネ・クロマーティカ(色彩 選別法)
欠損部の色彩 のトーンを純色(プライマルカラー)に色分解をし、緻密な近接したタッチによる、各色の平行なハッチングで色彩 的な再構築を行なう補彩技術。人間の網膜の特性上、一定のディスタンスにおいて、補彩 箇所は作品のオリジナル部分と調和し、絵画の鑑賞を妨げないが、ある一定の距離以上に接近した場合、線の集積による補彩 部分を容易に識別することが可能である
 

 

 
 
補彩部分(処置中)
充填整形後の補彩箇所に対し、ガッシュによる明るめのベースカラーを施し、樹脂絵具による補彩 を行なう。基本的に明色のトーンを得るために、白色絵具の添加を行なうことはない。そのため下層の充填材の白が補彩 の色彩を透過して得られる反射光を最大限に利用することで色彩 を濁らすこと無く必要な明度および彩度を得ることが可能になる。
補彩部分(処置後)
樹脂絵具による補彩が終了した段階。補彩 箇所を含めて終了ワニスを塗布後の状態。使用する絵具の選択肢とヴァリエーションは作品や損傷状態により異なるため、実際の作業は例に挙げた限りではないが、後世の段階での修復処置の必要性等を鑑み 、マテリアルは容易に除去することが可能な可逆性のあるものでなければならない。
 
 
SELEZIONE 補彩処置とセオリーについて

●充填整形

絵画の欠損部に対して、充填整形を行なう。石膏と兎膠による充填材を筆やスパチュラ等を用いて充填する。乾燥後にメス等により、周辺部のオリジナルの絵具とレヴェルをあわせる。 この際必要があればオリジナルの部分と連絡する表面 のイミテーション(亀裂、タッチ等、テクスチュアの再現)を施す。

●補彩のプロセス


充填材上に水彩絵具(透明もしくは不透明)や樹脂絵具での補彩 を行なう。必要があれば白色の充填材上にガッシュ等によるベースカラーを 施す。補彩の筆致は常に明確な近接した平行筆致(線の弱い交差や集積をも伴う)で行なわなければならない。純色を用いるが、この場合の純色とは三原色のみを意味するのではなく、パレット上で混色されていない色を意味する。この技法の特色である、集積した線の絵具の彩 度を最大限に利用した色彩的振幅とコントラストによる視覚的効果 を損なわない為である。同時に顔料の混色による化学的な不安定要素が取り除かれる。プロセスとして明色から始め、作業の進度に伴い、暗色へと移行させる。

●ワニス処置

補彩が終了した段階で終了ワニスを塗布する。ワニス塗布による屈折率の変化に伴い補彩 の色彩は変化する為、補彩の段階での予測が必要である。 特に不透明水彩絵具を用いた補彩の場合、視覚的変化が著しい為、ワニス塗布後に周辺オリジナル部分と色が合うようにコントロールする(実際よりも明るめに補彩 を入れる)ことが必要になる。


●樹脂絵具による色彩 調整

補彩部分と周辺オリジナルとの色彩の格差を補正する必要性がある場合、樹脂絵具による最終的な色の調整を行なう。樹脂絵具 は特性上、前述のようなワニスによる著しい視覚的変化が見られない。

 
補彩部分(処置後)
至近距離では補彩箇所とオリジナル部分が容易に識別 できる 。補彩の筆致は個々の線が明確で発色の良さを伴い、且つ一体感のあるものでなければならない。極端に太い、または細すぎる線であってもならない。線の長さと太さは、獲得する色彩 の違い、またはその作品の大きさに伴う鑑賞距離の違いによって異なる。
 
 
●補彩部分は近接距離では識別 可能であり、作品の鑑賞距離においてはオリジナルと調和し、視覚的な干渉や妨げとならないものでなければならない。

●セレッツィオーネによる処置は、補彩部分とオリジナル部分を明確に判別 しうる。

●補彩は化学的にも物理的にも安定したもので無ければならない。補彩 用絵具の展色材ー水彩(アラビアゴム)、樹脂絵具(ヴェネツィアテレピン・バルサム)の必要最小限の厚さ、及びプライマルカラーの使用は、この安定作用を保証しうる。

●補彩は可逆性を伴わなければならない。;補彩絵具の展色材は、経年劣化を経ても可逆性を失わないもので無ければならない。


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