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修復報告書

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ランビエンテ修復芸術学院 Istituto per il restauro "L'ambiente" 
徳川家収蔵作品 徳川家正公御肖像 修復報告書 

 
写 真11. 周辺部の茶紙の除去
 
写 真12. 処置前部分撮影ー黒い椅子上のカビ
 
1.額込の作品写真記録

額とともにお預かりしており、そのときの状態を証拠資料として残すべく行った


2.額縁から作品を分離


作品は額に釘で固定されていたので、作品を傷付けないようにまた錆びている釘を途中で切断しないように注意しながら、取り去った。作品を額から分離するために周辺部の茶紙を取り去り、ラベルの分離を行った。


3.処置前の調査


通常光、斜光、紫外線による損傷状態の観察および今後の処置に必要と思われる水分のテストを行ったが水溶性はないことが明らかになった。 


4.処置前写真記録


通常光、斜光、紫外線撮影


5.額のガラスの洗浄


エタノールをコットンに含ませ、付着したカビの洗浄を行ったが、カビの跡は無数に残り、処置後も同じガラスを使用するのは難しいと判断した。


6.木枠洗浄
 

エタノール水(1:1)で木枠を洗浄し、残っていた茶紙と接着剤を除去。キャンバスへの溶剤の浸透を防ぐため、木枠とキャンバスの間にシリコンフィルムを挟んで行った。特に木枠上の書き込みについては、この上を避けてこの作業を行った。


7.支持体裏面のドライ洗浄


木枠とキャンバスの間に付着した汚れを押し込まないように注意しながら、8号以上の豚毛の平筆で裏面 のほこりを掃き、吸引力を最小にした掃除機で作品に触れないように吸い取った。


8.楔のゆるみを補正

裏面から画布と木枠の間に当てをし、作品にカナヅチや手の圧がかからないようにしてから、くさびのゆるみを確認し、ゆるんでいる箇所は金づちで軽く3、4度叩いた。


9.周縁部ドライ洗浄


処置前の調査における洗浄テストの結果、画面上の汚損やニスの黄変は鑑賞性を妨げる程ではないものの画面 左下の椅子の部分に顕著なカビに対する処置が必要とされていた。従って殺カビ/防カビ剤TBZ(チアベンタゾール)溶液を0.01%に精製水を希釈したものを綿棒でごく少量 塗布すると同時に表面の汚損を拭き取る画面洗浄を行った。


10.画面付着物の除去


虫と思われる付着物が2つ画面左反面中央よりやや上の背景部分にあったので、メスで作品に損傷を与えないように除去したが、一部取れにくい部分にはTBZ溶液で膨潤させた後、メスで除去した。 


11.ニスがけのための溶剤テスト


ミネラルスピリット、エタノール、キシレンを作品に使用されている色毎に試験したところ,いずれもほぼ不溶解という結果 を示した。
資料2. 溶剤テスト
上図の箇所1-4について、溶剤に対する絵の具の溶解度を調査した。
絵具が溶解
絵具がやや溶解
× 不溶解
 
1
2
3
4
エタノール
×
×
×
×
キシレン
×
×
×
ミネラルスピリット
×
×
×
 
 
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