Kermes No.36 1999 sep-dec

 

WMF 世界記念物基金
(The World Monuments Fund)


 WMF 世界記念物基金イタリア委員会は、WMF 世界記念物基金のイタリア支局として1989年に設立された非営利団体である。この国際団体は、全世界の芸術遺産を保存修復するための活動を行っている。現在、パオロ・マルゾッコ伯爵が代表を務めるWMFイタリア委員会の貢献により、イタリアの様々な都市で30以上の重要な修復が行われた。
  WMFは、芸術財産の保護を担う<私的団体>の代表的な存在として、世界中でその名が知れている。


ボルゲーゼ宮殿「サザビーズ'99」を受賞
Palazzo Borghese vince il Premio Sotheby's99


 

 1999年10月12日、イタリアで第1回目の「サザビーズ'99」の受賞式典が催された。主催は、言うまでもないイギリスのオークション団体「サザビーズ」、とADIS(イタリア歴史協会)である。この賞は、中庭、噴水、ニンフェウムの最も優れた建築修復に贈られる。
 審査委員は、ジェームス・ストールトン(サザビーズ副社長)、アイモーネ・ディ・シーセル・デクス(ADIS会長)、ピエル・ファウスト・バガッティ・ヴァルセッキ(イタリア国立歴史庭園委員会長)、ミケーレ・コルダーロ(ICRローマ国立中央修復研究所長)、クラウディオ・ストリナーティ(ローマ文化財監督局長)で構成されている。
  賞は、全員一致でローマの「ボルゲーゼ宮殿の修復」に贈られた。この賞の基準を完全に満たしているばかりでなく、非常に高いクオリティーの修復がなされたと言う理由からであった。
  噴水のあるニンフェウム、回廊式中庭、庭園と高名な「チェンバロ・ボルゲーゼ」(二階部分のテラスを覆っているファサード突出部分)....深刻な病状を呈していた保存状態に、非常に念入りな研究が要求された。
  大気の要因、時間、公害による問題、枠組みや張り出しの連結部の不歩合、石灰の付着、石材表面の剥離....これらの問題に、できる限りの対抗措置で挑んだ。結果は、<満足のいく>以上と言っても過言ではないだろう。

ボルゲーゼ宮殿の修復-部分
(ローマ)

   


ロダン、ヴェネツィアに
Redin a Venezia


 

 ロダンの巡回展が始まる。
1999年11月7日まで、ヴェネツィアで開催されるこのロダンの石膏モデル展は、アーティストの制作プロセスを知る上で、また、特に彼の性質にぴったりのマテリアルを使った創造という視点でみても、非常に意義のある展覧会だ。
  ロダンによって、クレイで創られた最初のモデルは、石膏で型取りされ、このかたに石膏が流し込まれはじめて石膏モデルとなる。石膏モデルは、ブロンズ鋳造される前段階として、あるいは、大理石で彫る時の基準として創られている。
  「考える人」「年」のような傑作が、展示されていることからも展示品の充実度をはかり知ることができる。これ以上の展示は、パリのロダン美術館を除いてはない。 20体以上の非常に重要なブロンズ作品とともに石膏モデルが展示されている。
  カナル・グランデ(大運河)に佇む聖スタエ教会が、この重要な展覧会の展示場として選ばれ、雰囲気を高めている。これも展覧会をお勧めするもう一つの理由だ。

ロダン「考える人」
ヴェネツィアの展示会場で

   



ピサにおけるティーノ・ダ・カマイーノの修復
Tino da Camaino in restauro a Pisa


 もともとピサ大聖堂のファサードに掲げられていたティーノ・ダ・カマイーノ作の彫刻の修復が開始している。大気の要因や、時の流れ、汚染公害などで病んだ2体の天使と2体の預言者は、クリーニングが行われ、<退院>した。 修復が終わると彫刻は、付属美術館に展示されることになり、現在の場所には、石膏モデルが置かれる。
 同じように彫刻「聖母子」像も修復される予定であるが、現在はまだ同ファサードに置かれている。


Copyright(c) Nardini editore All Rights Reserved. 
このページのコンテンツの著作権は、ナルディーニ社&ランビエンテ修復芸術学院に帰属します。