欠損部分の取り扱い方の問題は、ブランディの思考のテーマであった。そして今まであまり深く探られることのなかったチェーザレ・ブランディの<修復>の思想の由来や起源をより深い観点から、彼の重要な変遷をたどりながら、カタラーノ女史は、追求し再構築したのである。
ブランディの思想は、論理的な視点から<修復>という行為を考え、定義づけ、それに関連する全てのものを捉えようとした思想であった。
フィレンツェのヴュッスュー資料館でチェーザレ・ブランディが書いたエンリーコ・ヴァレッキ宛の手紙が、女史自身の手によって発見され、本書の最後で初公開されることになった。ブランディのはかり知れない世界観を知る上で、大きく貢献することに違いない。
マリア・イーダ・カタラーノ 美術史家。ナポリ歴史芸術文化財監督局で、絵画修復を担当する。執筆された書物は、枚挙をいとまない。中でも16世紀から17世紀に渡るフィレンツェとナポリの彫刻と装飾について書かれた論文は、特筆されている。
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