静岡新聞
恩師の絵 プロのわざで修復

清水町出身の美術学院長
伊の専門家招きセミナー


●静岡新聞編集局情報調査部の転載許可済み●
 東京・八王子の美術専門学校「ランビエンテ美術学院」の船山千尋学院長=駿東郡清水町出身=がこのほど、絵画修復家を本場イタリアから招き「絵画修復セミナー」を同校で開いた。修復する作品として、学生時代に師事した田方郡修善寺町の画家で、七年前に九十一歳で亡くなった大城鎮雄さんの油彩画を使用。恩師の作品は、修復家のプロの技で見事によみがえった。
セローニ氏(右端)の手でよみがえる大城さんの絵画=八王子のランビエンテ美術学院

 
 船山さんは大仁高時代、同校の美術講師だった大城さんに師事した。大城さんのアドバイスで美術の道を志し、一九八八年にイタリア国立美術学院に入学。卒業帰国した後一九九四年、同校を創立した。
  このほど、フィレンツェにある同校の姉妹校から講師を迎え「絵画修復セミナー」を聞くことにした。修復する絵画を探す中で「プロの手で、先生の作品をよみがらせる絶好の機会」と考えた船山さんは、大城さんの息子伸彦さん(59)に連絡。伸彦さんは船山さんの熱意に動かされ、蔵に眠っていた昭和初期の作品「読書」「庭の供出の松」を快く貸してくれた。
  講師として来日したマッシモ・セロー二氏は、ウフィツィ美術館にあるボッティチェリの「聖母子」など国宝級作品の修復を手がけてきた修復家。 セミナーでは、損傷具合の調査結果で修復方法を決定。表面を水で洗った後、にかわ水を注射器で注入し、浮き上がった絵の具を定着させた。
  セローニ氏は、「修復で大切なことは、作家が大事にしていることを尊重することだ。必要以上に手を加えては行けない」と話しながら、患者を沿療する医師のように丁寧に作業を進めた。年月により表面に汚れや亀裂が入っていた作品がみるみるよみがえり、来場者からは「奇跡のようだ」と驚きの声が上がった。
  「あらためて作品を見たら、先生のダイナミックな生き様が集約された素晴らしい作品だと思った」という船山さんは「このような形で先生に恩返しできればうれしい」と話した。作品は伸彦さんに返却される。

静岡新聞 平成10年(1998年)12月13日

 

 

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