NEWSWEEK SPECIAL REPORT
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地味な仕事だが、思わぬ名画を発掘することも ● NEWSWEEK.INC転載許可済み● |
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PHOTOS BY GUGLIELMO DE'
MICHELI- GRAZIA NERI FOR NEWSWEEK JAPAN
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リッチマン(左)は入門コースを受講したのがきっかけで美術品修復のとりこに
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佐藤陽子(24)は、四人のクラスメイトとともに、作業をを始めようとしていた。みんな白衣を着て、カメラを手にしている。 |
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修復は根気のいる作業
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神奈川県出身の佐藤が在籍しているのば、フィレンツェ美術修復学院。美術品修復法の教育にかけては規模、内容ともにヨーロツパ一を誇る学校だ(学生数は約四〇〇人)。アルノ川の近くにある校舎で学生が学ぶ美術品の修復法は、根気のいる複雑な技術。年間授業料は一二〇〇万リラ(約九二万円)で、卒業まで三年かかる。二年生の佐藤は、大学時代に美術を専攻した。「[大学卒業後は、]美術館に勤めて、展覧会を企画したり、カタログを書いたりしようと思っていた」と、彼女は言う。「でも本当にやりたいのは美術品の保存に責献する仕事だということが、だんだんわかってきた」 |
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一年は作品に触れない |
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「あらゆる専門用語を覚えなくてはならない」という横山 |
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実際、授業を理解するには、かなりの語学力がいる。「方法論についての授業が多いので、ありとあらゆる専門用語を覚えなくてはならない」と言うのは、二〇人ほどの日本人ともに美術品の修復法を学ぶ横浜市出身の横山佳奈恵(27)だ。 同校で修復法を身につけた人の大半は、卒業後の一〜二年間、見習いとして経験を積む。技術を生かして就職したり、自分のオフイスを構えたりするのはその後だ。 学生は美術を学んだ人ぱかりとはかぎらない。「鉛筆を握ったことのない学生もいる」と、講師のニーナ・オルソンは言う。 たとえぱ、カナダ人のレベッカ・リッチマン(23)。彼女は一ヶ月間の入門コースを受講する前に、トロントの靴店で働いていた。すぐに美術品修復のとりこになった彼女は、昨年秋に同校に正式に入学。リッチマンいわく、「最高の選択をしたと思う」。 とはいえい授業が楽しくてやさしいというわけではない。高校を卒業した人なら誰でも応募資格は あるが、授業は厳しく、細心の注意が要求される。授業内容が退屈なことも多い。入学してすぐにマチスの絵に触れられると思ったら大まちがいだ。「一年生のうちは、作品に手も触れられない」と、副学院長のキアラ・バルトレッティは言う。 学生はまず、復法の基礎を学ぶ。修復の手順から保存や修復に使う化学薬品まで、覚えなけれぱいけないことは山ほどある。 ある教室をのぞいてみると、最近の修復作業でよく利用される合成樹脂に関する講義が行われていた。別の教室では学生たちが、古いキャンバスからはぎ取った絵の具の破片を顕微鏡で観察している。 |
芸術ではなく科学として スティーブン・ハイルブロナー(フィレンツェ) |
62 63 NEWSWEEK1997.11.26
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